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自治体人事評価制度の課題と評価者研修1 「制度設計ができれば一段落?」

NOMA行政情報 No.37 2008年7月1日

総務省の調査によると、平成18年度中に勤務成績の評定を実施した市区町村は全体の52.5%となり、実施団体は50%を越えました。そこで、本稿では人事評価制度の試行を開始した自治体を想定し、今後取り組むべき課題について述べることにします。

制度設計ができれば一段落?

人事評価制度の導入は、最初に制度設計、次いで試行、そして本格的な運用へと進めていきますが、制度設計を終えて試行まで漕ぎつければ“一段落”と考えてしまい、その後の改善を行っていないケースが多いように思います。しかし試行期間は設計した仕組みがうまく機能するか試していただく検証期間であって、まだ制度は完成していないと考えなければなりません。

(1) 公務の多様性に対応する

自治体には様々な仕事、職種があります。仕事が違えば求められる能力・行動は異なりますし、仕事をする環境も異なります。本来であれば、それぞれの職場環境に適した評価の仕組みや評価項目などを適用させることが望ましいと言えます。

特に、コンピテンシー評価をはじめとする行動ベースの評価では、保育士、教諭、消防職員、医師、看護士などの職員は一般の事務系職員と異なる評価項目や着眼点を準備しなければなりません。また、技能労務職員については、業務特性のほかに、誰が評価すべきかといった職場環境の違いも配慮した制度設計が必要になります。

(2) 評価制度がうまく機能するか検証する

制度設計は常に一定の想定のもとで行われます。例えば、「人事担当部門が要請すれば面談や評価は実施してくれる。」、「評価者は部下の能力を評価する力がある。」、「上司と部下とのコミュニケーションはむしろ改善される。」などです。

しかし、これらには制度運営上欠かすことのできない前提条件があったり、希望的観測が含まれています。重要な前提が崩れると様々な問題が生じ、人事担当部門に対する不信感や不満が噴出しかねません。実際はどうであったか、インタビューやアンケート調査などでつかむこと、そしてその状況や意見に対する迅速な改善工夫が今後の成否を左右します。

(3) 評価者の評価能力を高める

人事評価制度が職員に受け入れられるかどうかは、評価の公正さが確保されるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。

多くの自治体では、管理監督職は評価者の経験がありません。試行という経験を通じて評価能力を高めていくこと、部下との日頃のコミュニケーションを充実させていくことがきわめて重要になります。評価のルールを知るだけでなく、実践的な評価者研修を行うことが重要ですが、その内容については、本稿の「評価者訓練にも工夫が必要」において説明します。

(4) 試行を通じて運用のノウハウを身に付ける

試行期間は人事担当部門にとって、様々な経験・知識を身につける期間です。例えば、①本格的運用を想定して、評価から是正、給与決定までの手順を実際に試してみる。②試行中に発生する個々の問題を題材に実際の運用方法を再検討する、③職員からの様々な質問に対して適切に対応し、運用ノウハウを確立する。などです。

特に、コンサルタントから支援を受けている場合では、試行期間中に何かとコンサルタントに質問をぶつけて運用のノウハウを吸収することが大切です。「期の途中で異動があったときはどうしたらよいか」、「部下を観察できない事情のある職場ではどんな対策が考えられるか」、「一般職員や住民からの情報に基づいて評価してもよいか」など、率直に質問してください。コンサルタントはいつまでも面倒は見てくれません。