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自治体における人事考課制度の特徴(2) 「係長による評定と性格評価」

「地方自治職員研修」2001年12月号掲載

3 係長職が考課に参加していない

 自治体では、直属上司である係長が人事考課のプロセスに関与していないケースが多い。一般職員に対する人事考課であっても、ほとんどの場合、課長が一次考課を行い、二次考課は部長(町村では助役)が行っている。しかし、係長が部下の考課にまったくかかわることなく、また、部下の考課結果も知らされない状態で、はたして人事考課の目的が達せられるものであろうか。

 一般に、人事考課制度における一次考課は直属上司が行うものとされている。その理由をここで確認しておく必要があろう。

  • 事実に基づいた適切な評価が期待できる
     人事考課は事実に基づいて評価しなければならない。考課者は被考課者の日常の行動を観察し、記録をつけ、その蓄積された記録を判断材料にして考課を実施する。行動の観察は考課の出発点であり、観察が適切にできなければ公正な評価にはならない。その点、直属上司は、部下と日々接しており、部下の職務行動を最もよく観察できる立場にある。
  • 仕事のプロセスや成果を適正に評価できる
     上司は、部門の目標達成のために、部下に任務を与え、特定の行動や結果を求める。したがって、部下が実行した内容、プロセスが上司の要請に応えるものであったか、結果は期待どおりであったか等については、実際に指揮命令をした直属上司が最も適正に判断できる。
  • 考課に基づいた適切な指導、支援が期待できる
     能力開発を目的とした人事考課では、考課の結果を本人にフィードバックし、個別面談等を通じて、適切な指導、支援を行うことが基本になる。直属上司が自ら考課を行い、育成面接を行えば、職場の実態に即した指導、助言が期待できるし、部下の成長に見合った効果的な指導を実践できる。
  • 相互信頼関係に基づく人事考課の定着化が期待できる
     一般職員にとって、係長は指揮命令者であると同時に係のまとめ役でもある。部下にとっては、日々接している直属上司が考課を行い、個別面談を実施する仕組みであれば、比較的抵抗なく受け入れることができる。また、コミュニケーションの基盤があると、本音で話ができるため、人事考課制度に関する理解も深まり、制度の定着化を進めやすくなる。

 自治体では、"人事考課は「管理職」が行うべきもの"という、査定主義、秘密主義時代の固定観念がまだまだ根強く残っている。しかし、人事考課のあり方を、一方的な査定主義から能力開発型へと大きく転換させるのであれば、考課の方法もそれに応じたものへと大幅な見直しを行うことが必要になる。特に、能力開発を目的とした人事考課制度では、職場のOJTと連動させる必要があり、係長が一次考課者になることが不可欠な要件となる。最近になって、一次考課を係長職が行うように見直した団体が増加しつつあるが、全体から見ると、まだまだ少数派に過ぎない。改むるに、はばかることがないようにしたいものである。

4 考課表に性格評価欄がある

 自治体の考課表を集めてみると、ほとんどの考課表に、能力、態度、成績等の考課とは別枠で、部下の性格を評価する欄がある。次の項目は、上下どちらかの□にレ印をつける方式の実際の例である。

□誠実    □不誠実
□慎重    □軽率
□機敏    □鈍重
□寛容    □偏狭
□理性的  □感情的
□外向的  □内向的
(以下、略)

 自治体で「性格評価」が行われている理由は、人事院規則10-2(勤務評定の根本基準)の第二条に見出すことができる。第二条には、勤務評定の具備すべき必要条件として、「執務に関連して見られた職員の性格」を「公正に示すものでなければならない」とされている。人事院規則は国家公務員について定めたものであるが、「国公準拠」の原則があるために、地方自治体もそれに準じて実施していると考えられる。

 しかし、一般に「性格」は、持って生まれた気質(人間個人の思考や行動を規定する素質的部分)と、後天的な個人の特徴が組み合わさって全体的な個人の性格像ができると言われている(図を参照)。そのため、「性格評価」は「持って生まれた気質」の評価につながる危険性をもっている。
性格を把握し、適材適所に活用するという考え方もあるが、適材適所と性格との関係は、あくまで当該職務とそれを遂行する職員の行動や態度の問題として評価すべき事柄である。

 例えば、外向的な人は、初対面の人でも親しく話すことができるが、人とふれあう仕事がうまくいくかどうかは分からない。外向的な人でも、心配りが苦手で信頼関係が構築しにくい人もいれば、内向的であっても相手の立場をわきまえて行動でき、時間はかかっても、既知の仲のように信頼される親交上手な人もいる。また、慎重で粘り強く、まわりから信頼される人もいれば、同じ慎重なタイプであっても、考え方が硬く、細部にこだわるために、周囲から煙たがられる人もいる。だれがどの仕事に適しているか、仕事ができるかどうかは性格を見ただけでは分からない。仕事に表れた行動、態度で評価しなければ、職務上の能力は公正に評価できないのである。

 また、人間の感情としても、もし、評価されるのが自分であったら、と考えてみれば、快く思えるはずがない。職務遂行とは関係のない「性格評価」は人物評定と同じであり、早急に廃止すべきである。

 なお、元総務庁における「人事評価研究会報告書」(平成12年5月)においても、「現行の性格評価の抜本的見直しの必要性」が指摘され、「現行のような性格評価を廃止し、執務に関連して見られた職員の性格については、能力評価のための仕組みにおける行動特性の評価を通じてのみ把握することとすべき」と述べられている。

 自治体の人事制度は大きな転換期にある。しかし、どのようなシステムに変わろうとも、人を活かすためには人を知らねばならない。人の評価なくして人事制度は成り立たない。人事考課制度を確立し、一人ひとりの能力を活かす人事を行って欲しいものである。