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「数値化方式」(能力評価)は多々問題あり、そのまま採用するな

総務省が参考例として示した「数値化方式」に関しては、評価項目ごとに評価基準が示されていて、分かりやすいという評判があるようです。

しかし、この「数値化方式」は減点主義の傾向が強く、残念ながら、能力主義の考え方(個々の人材の個性を見極め、十分に能力を開発し、その人材の活用をはかる。)とは相容れない評価方法を用いています。 そこで、「数値化方式」の問題点について指摘したいと思います。

1 減点主義的傾向が強いこと

実際に評価をしてみればわかることですが、職務遂行上、その行動や能力に特に問題のない職員は高い点数が付くようにできています。

評価項目には、それぞれ「イ」~「ハ」又は「二」までの評価の判定基準(着眼点)が設定されていますが、最も高い評価である「イ」の内容を見ると、一部の評価項目を除き、当該職として当然にそうあってほしいレベル(標準に近いレベル)で記述されています。評価基準のレベルが甘いのです。こうなると、高い点数に職員が集まることになり、大きな差は生じません。

一方、能力が標準に満たない、あるいは態度に問題のある職員は差が生じやすくなっています。

2 本人の気づき、目指すレベルの認識につながらない

評価の選択肢(評価基準)を示すことは、人事評価の判定の目安とするだけでなく、もう一つの大きな目的があります。それは、職員に高いレベルの行動・能力を読んでもらい、「より高いレベルがありますよ、そのレベルを目指しましょう。」というメッセージにするということです。

そのようなメッセージが示されず、特に問題がなければ高い点が得られる、そのような評価制度が職員のためになるとは思えません。

3 標準的な職員が高い昇給、手当が得られる可能性がある

実際に評価してみるとわかることですが、 「数値化方式」を使えば高い点数に職員が集中します。もし、この評価結果を集計し、点数の高い職員から順番に、一定の割合の職員数を総合判定の「S」、「A」と決める方法を採用すると、ほとんど点差がない状況で、「S」、「A」、「B」を決めざるを得なくなります。

また基準自体が甘いですから、特に優秀でなくても、処遇上有利に判定される可能性があります。 今の評価基準(「イ」~「ニ」)の場合には、優秀な職員はもちろん高い点数になりますが、標準的な行動、能力の職員であっても僅差の高い点数になるからです。

標準的な職員であればその総合評価は「B」でなければなりません。これを「A」と評価し、処遇に反映すれば住民を欺く行為と指摘されかねません。

4 職員の個性を十分把握できない(人材育成に向かない)

人事評価制度は、不十分な点はしっかりと把握し、今後に向けた指導助言を行いますが、良い点もしっかりと認めていくことも大切です。個性を認め活かすことが高い専門性のある職員を育てます。

しかしながら、数値化方式は減点主義的傾向が強いうえに、「イ」から「ニ」の選択肢を読んで評価を決める方法を採用しているため、その記述以外の行動や能力は評価からはじかれてしまいます。

具体的な例を挙げて考えてみましょう。係員用の人事評価記録書を見てください。次の行動や能力はどの評価項目に反映したらよいでしょうか。

  • 積極的な提案や意見の具申
  • 自己研鑽に関する行動 ・ 折衝や調整に関する能力
  • 外部機関との連携や協力体制の構築
  • 資源の節約や経費の節減(コスト意識)
  • 斬新なアイデア等の発想力
  • 住民の要望や意見を聴く行動
  • 上司への報告・連絡・相談
  • 新たな課題等への積極的なチャレンジ

いずれも係員に身に付けてほしい大切な行動ですが、反映すべき評価項目が見つかりません。「数値化方式」は特定の行動のみに焦点を当てた評価の仕組みであり、職員の個性を十分把握できる仕組みではありません。すなわち人材育成に向いていないということです。

なお、コラム「総務省の参考例(「評語付与方式」と「数値化方式」)を活用する際の注意点」も参考にしてください。