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D評価の公務員が1万人に1~2名しかいない?

まず、「SAPIO」2月22日号、政策工房社長の原英史氏の記事を紹介します。

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公務員の場合、仕事を頑張ってもさぼっても、年功序列で昇進し、給与も上がっていくということになりがち。これが組織の非効率を生む。だから、頑張った人を評価し報いる仕組みの導入が必要だ。

ところが、その前提になる人事評価がそもそも機能していない。例えば、大阪府管理下の教員の場合、形式上は5段階評価(S、A、B、C、Dの順)を実施しているが、実際の評価結果をみると、A評価とB評価がそれぞれ約50%。最下位のD評価に至っては0.01 ~0.02%(1 万人に1~2名)という数字だ。

普通、5段階評価ならBを中心に富士山型の正規分布になるものだが、およそかけ離れた異常な形状の分布になっている。

これをまず何とかしなければということで、府・市双方において、条例での評価ルール設定の検討が進んでいる。これは、地方だけでなく、国にも同様の問題がある。

国家公務員の場合、「人事評価の基準、方法等に関する政令」という政令で、5段階評価が義務付けられている。ここでもやはり、下位評価は実際にはあまりつけないのが一般的だ。この点は国会でも議論があって、江利川人事院総裁がこう説明している。

「公務員の採用は試験でやっている(中略)試験ですそ切りをしておりますので、その能力評価が正規分布になるということではないんではないか」(10月5日、衆議院東日本大震災復興特別委員会)

つまり、「公務員は公務員試験を通った人ばかりで、みんな優秀。だから評価が下の人はいない」というのだ。この理屈で納得する人がどれだけいるのだろう。多くの民間企業でも採用試験をやっていることさえご存じないのか。
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ついに、指摘されてしまったか・・、という感があります。

民間企業では、昇給配分、賞与配分ともに5~7段階が主流で、中央の評語を中心に左右対称とするケースがほとんどです。

例えば、S:A:B:C:D=5%:20%:50%:20%:5% などのように。

C、D評価の配分が少ない事例も存在します。例えば、D評価の配分をあえて決めておかなかったり、C+Dで20%に定めたり。しかし、あくまで少数派です。

国も、東京都も、そして大阪府も、この少数派の配分を採用しています。国や県が採用すれば市町村もそれに倣います。今や、民間での少数派は自治体では多数派となってしまいました。

「勤勉手当は原資の枠内に収めるので問題はない」と言う人もいるでしょう。しかし昇給はどうでしょう。市民が見たらどう映るか・・、明らかです。

2月17日、大阪維新の会の大阪府は、職員の人事評価制度や処分規定を明確化した職員基本条例案を公表しました。相対評価の区分は5段階とし、上から順に「第1(5%)、第2(20%)、第3(60%)、第4(10%)、第5(5%)」と規定しました。また、2年以上継続して「第5」の職員について、指導や研修などを経ても改善の見込みのない場合は「降任・免職」できる、としました。

大阪府は、下位評価を極端に抑制する方針を変えると宣言したことになります。あくまで案の段階ですが。

人事コンサルタントの城繁幸氏は自身のブログで、このことにふれていますが、記事の中に誤解されやすい部分があります。城氏のブログは影響力があるので、少し補足したいと思います。

城氏は、大阪府の相対評価について、「これ自体は民間企業でもポピュラーな方法だ。」としながらも、「ただし、問題なのは、維新側が2回連続D評価の職員に対する分限免職の適用を視野に入れていることだ。極論すると、上位一割に入る人材であっても、そういう層の多く集まる部署に配属されてしまうと分限免職の危機に直面するということだ。これは導入前にも導入後にも揉めに揉めるだろう。」としています。
(http://jyoshige.livedoor.biz/archives/5227399.html)

「極論すると」から以降の文章ですが、まさに「極論」であるので注意してください。

城氏は、部門ごとに、相対評価5区分の割合となるよう評価を決める仕組みを想定しているようです。だから、優秀なメンバーが集まる部門に配属されると「分限免職の危機に直面する」と言っているのです。確かに、課単位に5区分配分を行えば、その可能性が出てきます。しかし部単位でならどうでしょうか。

もっと言えば、大阪府は「相対評価」を行うとのことですが、絶対評価をせずにはじめから相対評価をするとは思えません。現行の大阪府の評価方法は、評価要素ごとに、「4」~「1」を選択する絶対評価を採用しているため、総合評価点を算出することができます。職位ごとに対象者を分けた上で、総合評価点を相対区分して、「第1」、「第2」等を決める方法も考えられます。

多数の人材が集まったとき、その人々の能力は正規分布に従います。これは明らかなことです。当然、国家公務員も・・たとえ入職時に選抜されていても、正規分布に従います。

どの組織においても、残念な職員がいます。人事担当者の想いは、「人事評価でさらにやる気をなくすような事態は避けたい」といったものではないでしょうか。でも、D評価に該当する職員を、BやCに評価すれば、問題が改善するでしょうか。いやなことを避けているだけ、ということはないでしょうか。

D評価に該当する職員も様々です。それらの人材をどうしたいのか、そのためには何をすべきなのか、本来はそれを十分検討することが先決でしょう。その上で、厳正な人事評価を行うべきである、と考えますがいかがでしょうか。