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人事評価では、被評価者の行動事実を把握し、その行動事実が組織の要求や期待を満たすものであったか評価します。そのため、通常は組織の側の人材(上司等)が、人事評価を行って評価を決定します。
ある自治体の人事評価のマニュアルに次の文章がありました。
「評価者は、自己評価の結果を見ながら評価しますが、その際には本人の判断を最大限に尊重して評価しなければなりません。つまり、原則として自己評価をベースとし、根拠となる事実を観察している(きちんと説明できる)場合のみ、本人と異なる評価をしてもよい、ということになります。」
つまり、評価者の側に明確な根拠がないかぎり、自己評価と異なる評価をしてはならない、としているのです。
実はこの記述は、人材育成を目的とした岸和田市のマニュアルの一部分をそのまま転用したものです。この考え方に感銘を受けたであろう人事担当者が、マニュアルの記述に加えたものと思われます。
しかし、岸和田市のように人材育成目的のみに評価結果を使うのであれば、これでもよいのですが、昇任昇格、給与決定等に活用するとなれば、このままでは不都合な点が出てきます。
すなわち、自己評価を最大限尊重すべきという評価は、自己評価の影響力がきわめて大きなものとなりやすいからです。評価者は自己評価を変更しにくく、また「尊重する」という記述があるため安易に自己評価に頼る傾向も出やすくなります。
そこで対策ですが、まず、人事評価は評価者が行うべきものであることを周知徹底する必要があります。評価結果は最終的には評価者側の判断でおこなうものです。そうでなければ評価の公正さは確保できません。評価者は評価の結果に責任を持たなければならないのです。
さらに、自己評価の結果には頼ってはならないが、自己評価の背景となった根拠は「尊重」するよう徹底を図ります。被評価者が自己評価をしたからには、そこには必ず理由があります。評価者はその理由(根拠)もよく聴いた上で評価を決める必要があります。
なぜなら、評価者は被評価者のすべての行動を見ることはできないからです。自己評価の根拠となった事実の中には、評価者の知らない事実が潜んでいる可能性があります。それゆえに、評価者は面談等を行って、自己評価の理由を十分に聴き、その根拠が事実であれば、その事実も踏まえて評価を決定することが必要になってくるのです。
自己評価の“結果”に「頼る」はだめですが、自己評価の“根拠”は「尊重」してください。
もちろん、評価者は日頃から部下の行動事実を観察・指導し、評価できるだけの事実を把握しておかなければなりません。また、処遇に影響を与える評価制度の場合、「よくわからないから、“標準”のBにしておこう。」ではすまされません。
(注)このコラムは、岸和田市の評価制度を批判するものではありません。岸和田市の評価制度は、人材育成を目的とし、特に本人に“気づき”を与える「自学」を基本とした制度として設計されており、給与への反映は想定されていません。これも一つの考え方であり見識だと思います。むしろ、この制度を参考にする側が、そのことを十分わきまえることが大切です