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自治体のコンピテンシー評価に発揮頻度型は適しているか

コンピテンシーによる評価を導入している自治体では、具体的な行動を「着眼点」として示し、次のような、発揮頻度型(出現頻度を問う、「頻度観察法」とも言う。)の評価基準を使っているケースがあります。

   a  : このような行動が、よく見られる
   b  : このような行動が、たまに見られる程度
   c  : このような行動が、ほとんど見られない

本来のコンピテンシーの考え方で構築した制度であれば、このような発揮頻度型の評価は可能です。しかし、多くの自治体で導入しているような、職員に期待する行動をベースに、職別又は職層別の評価項目、着眼点を整理している場合(これを「コンピテンシー評価」と呼んでいる自治体が多い)では、この発揮頻度を捉えて評価する方法がしっくり行かないことがあるのです。

本来のコンピテンシーによる評価では、成績優秀者の行動を分析し、成果に結びつく行動特性を抽出して、同様な行動が身についたかどうかという視点から評価します。したがって求める行動は具体的です。仮に、店舗販売員において、「お客様に商品説明をする際には、お客様の興味や注目している点をうまく捉えて商談を進めている。」といった行動が販売額の増加と相関関係が認められたとすれば、他の販売員にも同様な行動を求め、同じ行動がとれるようになったか評価するのです。

したがって、同じ具体的な場面において同様な行動が「よく見られる」のか、「たまに見られる程度」であるのかといった出現頻度型は納得を得られやすいと思います。 

ではなぜ、自治体における「コンピテンシー評価」においては、発揮頻度型が”しっくり行かない”ことがあるのでしょうか。

1 自治体の「コンピテンシー評価」のほとんどは、職に応じた期待行動の評価である

まず、指摘しなければならないことは、自治体における「コンピテンシー評価」の多くは本来のコンピテンシーではなく、期待行動の評価である点です。個々の担当している業務の違いに応じてコンピテンシーを抽出したものではなく、主事であれば主事相応の期待行動を、主査であれば主査相応の期待行動を、というように、それぞれの職(補職)別に求める期待行動を抽出しています。個々の業務特性に応じた設定ではありませんので、期待行動の表現は抽象的にならざるを得なくなります。

例えば、ある自治体では、「問題意識」という「コンピテンシー項目」において、主事、主査のそれぞれに求める行動(着眼点)を次のように設定しています。

主事: 業務の現状に満足することなく、取り組むべき課題を理解している
主査: 問題の発生をすみやかに察知し、問題の背景や構造を的確に分析している

このような行動については、単に該当する行動が多いか少ないかではなく、この行動が必要なときに、この内容を満たす行動が確実にできているか、という視点から評価した方が、評価の趣旨に合致していると考えられます。なぜなら、これらの行動は、該当する職に期待するレベルとして設定されているからです。

2 発揮頻度のみで評価すると、担当職務の違いが評価を大きく左右する

繰り返しになりますが、自治体における「コンピテンシー評価」の多くは、個々の業務の違い、成果の違いに応じたものではなく、それぞれの職に求めるレベルに応じた期待行動を評価しています。 そのため、次のような期待行動(着眼点)を発揮頻度型で評価すると、実際に担当している業務によって有利不利が生じやすくなります。

・ 「住民に接するときには、まず相手の話を十分に聴き、誠実に対応している」
・ 「他のメンバーと協力して職務にあたり、チームに貢献している」

最初の例で述べると、住民窓口や住民相談など、住民に接する機会が多い業務では、この行動の発揮頻度は多くなると考えられます。一方、あまり住民と接する機会が少ない業務では、この行動をとる機会自体が少ないのですから、発揮頻度は少なくなり評価は不利になります。後者の例においては、単独で遂行する傾向の強い業務では不利になり、チームで連携して遂行する業務では有利になります。

3 常日頃から満たしていなければならない行動、特定の状況下でないと出現しない行動は、発揮頻度型では評価しにくい。

こちらも例を挙げてみましょう。

・ 「服務規律を遵守し、公私混同はなく職務に専念している」
・ 「逆境や強いストレスの下でも、感情的にならず、冷静に判断し対処している」

最初の行動について発揮頻度型で評価すると、ほとんどの被評価者は「よく見られる」という評価になります。服務規律を守ることや職務に専念することは組織で仕事をする者の基本であり、常に求められる態度だからです。服務規律のように常に遵守すべき事柄については、その行動が多いか、少ないかで評価する発揮頻度型はなじみにくいと言えます。

一方後者はストレス耐性を見るものですが、「逆境や強いストレス」がかかる状況が起きないと評価が出来ません。強いストレスのかかる機会の少ない職務では、「c」(「ほとんど見られない」)とするか、もしくは評価不能にせざるを得ません。

このように、本来、コンピテンシーによる評価で使う発揮頻度の視点を期待行動の評価に使うと、評価がしにくい、なじみにくいといった問題が生じやすいのです。現在、発揮頻度型を使っている自治体において上記と同様の問題が生じていないか是非チェックしてください。

なお、発揮頻度型の評価基準においては、評価者は被評価者の日頃の行動をよく見て期待行動の「出現頻度」を掌握しなければなりません。一度見て、出来ていたから「a」にする、というわけにはいかないからです。