コラム

« 評価を給与に反映すれば能力主義になったと言えるか? | コラムTopへ | 自治体のコンピテンシー評価に発揮頻度型は適しているか »

精神性疾患から職場に復帰した職員に対する人事評価

うつ病などの精神性疾患から職場に復帰する職員を迎え入れるときには、人事労務スタッフと上司は、主治医と連携して、治療の状況、再発の可能性等を確認し、ストレッサーの排除、業務の内容、サポート体制、治療上必要な配慮などについて十分に検討しておく必要があります。いわゆる「職場復帰支援プラン」を作成するのですが、その検討事項の一つに人事評価制度があります。

人事評価の実施に関しては、少なくとも次の2つの検討が必要です。

1 人事評価を実施するか否か

通常、評価対象期間中に休業、休職がある場合には、その休職等の日数等に応じて、人事評価の実施対象者からはずす規定を設けます。また、復帰後の間もない時期(例えば、「復帰後6ヶ月未満」等)に人事評価が行われる場合には、著しく不利な評価になることを避けるために、人事評価を実施しないことにしたり、あるいは特例の評価ルールを定めた上で実施しているところもあります。

これらの規定は、精神性疾患から職場に復帰する職員に対しても適用されます。ただし、精神性疾患の場合には、疾患の原因、症状、回復までの期間等はさまざまであることから、人事評価を実施することによる影響を考慮して、そのつど職場の上司、産業医と協議の上、実施するか否か判断するといった慎重な対応が必要になることもあります。

2 フィードバック面談を実施するか否か

人事評価を実施することによる影響の中で、最も精神的な影響を与える可能性が高いと言えるのはフィードバック面談(評価結果を伝達する面談)です。そこで、人事評価は行うものの、フィードバック面談は実施しないといった対応が考えられます。

仮に、総合評価がS~Dの5ランクであった場合、人事評価を実施しなかったために規定上「C」にした、というケースと、人事評価を実施して「C」にしたのとでは、被評価者の受け止め方は大きく異なります。同じ「C」でも意味するものが違うからです。

人事評価を行ったのであれば結果を伝えるのは当然であって、むしろ上司による面談の仕方を工夫すべき、という意見もあるでしょうが、理想どおりには行かない現実にも配慮しなければなりません。 上司の伝達能力が不十分であるために、必要以上に自分を責めてしまう職場復帰者がいます。また、精神性疾患によっては人の意見をいっさい受け入れることが出来ず、上司に対して暴言を浴びせかけるケースもあります。

フィードバック面談といった形態をとらずに、職場復帰支援の一環としてカウンセリングを行うことも考えられます。

これまでの回復の経過を振り返り、仕事の状況や本人の悩みを聴き、さらなる回復に向けて問題解決の話し合いを行います。この場合、上司は、職場復帰者の仕事の量、内容面での配慮のほか、日頃の声かけ、細かなサポートなどを行ってきたかなど、お互いの信頼関係の基盤が大切になってきます。また、産業カウンセラーの資格を持つ人事労務スタッフを同席させるなどの対応も検討します。

職場復帰者への対応について述べましたが、精神性疾患のある部下を預かる上司の負担についても考慮する必要があります。特に成果主義傾向の強い評価制度であると、足手まといな部下を排除したいという考え方に陥りやすくなります。むしろ、部下を預かり現場復帰させる業績を積極的に取り上げて評価する仕組みにすることが大切です。

残念なことではありますが、異質を排除する傾向(許容度の低さ)が職場にあるために、復帰者の精神的な圧迫につながって再発を招いたり、上司のカウンセリング・マインドのなさ、配慮のなさが症状をより深刻化させる原因になっていることも少なくありません。

職場への復帰は、精神性疾患が完治したからではなく、通常業務が可能となる見込みが立つところまで回復した状態、と考える必要があります。人事担当部門による組織的対応(リハビリ的業務配分、気楽に悩みを話せる指導・相談体制など)はもちろん大事ですが、何よりも重要なのは上司からのサポートです。時には部下の心の支えになることも必要です。回復のプロセスを前に進めるためにも、管理監督職にはメンタルヘルスやストレスマネジメント(自分のストレスマネジメントも含めて)に関する研修を必須にするなど、必要な知識を身につけておいてほしいものです。